スペシャルティ・コーヒーのコンセプトのひとつがサステナビリティ(持続可能性)です。
サステナブル・コーヒーという言葉が広く知られていますが、買い手や消費者にとっての利益だけでなく、
現在と未来における生産者の暮らしや自然環境をより良い状態で保つことを考慮して生産・流通するコーヒーのことです。
消費者が高い品質と価値を持つコーヒーを安価に買えば消費者は一時の利益を得ますが、その状態が続くとコーヒーを生産する農家や農園はいずれ困窮し、
生活のためにコーヒーの生産をやめざるを得なくなります。
また、生産者が大量生産による一時の利益の拡大を求めて安易に大規模な開発をすれば、周囲の自然環境や生態系が破壊され、
未来には荒廃した土地のみが残ることとなります。
そこでコーヒーの買い手が生産者に相応の対価を支払い、良質なコーヒーが正当に評価され高い価値で取引されることで、
生産者にとってはさらに良い品質を目指すモチベーションとなり、持続可能で双方に利益のある関係を続けようという配慮がなされています。
環境への配慮についても、シェードツリー(コーヒーの木のために木陰を作る背の高い木で、野生の鳥などの住処にもなる)の活用と現地の動植物との関係など、
今ある自然とコーヒー農園の共存を目指す取り組みが行われています。
農園と自然の関係だけではなく、栽培や加工に携わる従事者の教育や労働環境の向上もまた、コーヒー豆の品質向上と持続可能性には欠かせません。
スペシャルティ・コーヒーでもそうでないコーヒーでも、美味しい一杯のコーヒーのすべては、農園で働く人の手から始まります。
コーヒーの美味しさに感動し絶賛する時こそ、消費者・生産者・自然の動植物がお互いに幸せでいられる美味しいコーヒーのある世界が続くよう、
持続可能性について考える機会でもあるといえるでしょう。