カスティージョ種とコロンビア種:
病気に強い品種の研究開発を目標とし、コロンビアのコーヒー研究所で1982年に生まれたコロンビア種。
以降もたゆまない研究改良が重ねられ、より強い病害耐性と木自体の長い寿命、良い風味と多い収穫量を兼ね備えた、カスティージョ(カスティーヨ)種が生まれました。
どちらもカトゥーラ種とティモール・ハイブリッド種の交配種(カティモール)で、カトゥーラ種の風味の良さとティモール・ハイブリッドの病害耐性と矮小性(木が小ぶりに育つため、同じ面積により多く栽培できて収穫量が増える)を併せ持って生まれました。
特にカスティージョ種は、アラビカ種のなかでは風味がいまいちとされていたティモール・ハイブリッド種の交配ながらカトゥーラ種と変わりない優れた風味を持つとして、そのサンプルはSCAAで90点以上のスコアで評価されたとされています。
コロンビアのコーヒー産業を近年力強く支える品種の一角がカスティージョ種ともいえます。
(ハイブリッド種のコーヒーとは、風味が良く病気に弱いアラビカ種に強靭なカネフォラ種の遺伝子を組み込んだコーヒーとされます)

コロンビア - ラ・プラデーラ農園(ナチュラル)


カツーラ系の3品種:
カツーラ(カトゥーラ)種はブラジルのミナスジェライス州で生まれたブルボン種の突然変異種です。
木が小ぶりに密集して育つ矮小性のため、同じ面積でより多くの木を栽培して収穫を増やすことを可能にしました。
しかし病害耐性がやや弱く、病気の蔓延で農園が全滅するなどの危機を避けるため、より病気に強いカティモール(カツーラ種とティモール・ハイブリッド種の交配種)が生まれました。
(ハイブリッド種のコーヒーとは、風味が良く病気に弱いアラビカ種に強靭なカネフォラ種の遺伝子を組み込んだコーヒーとされます)
コロンビア種はそのカティモールから生まれた風味の良さと病気への耐性を併せ持つ品種ですが、病気への耐性は木の寿命にともなって弱まるため、さらなる研究改良が重ねられました。
そして近年生まれたのがカスティージョ(カスティーヨ)種で、優れた風味を持つカツーラ種と品質上差がないと高く評価されたほどの良い風味だけでなく、病害耐性・高い順応性・長い寿命・より多くの収穫量などの特性を兼ね備えた品種です。
優れた風味と安定した供給は消費者・生産者双方にとっての夢でもあり、カスティージョ種は現在コロンビア産のコーヒーの多くを占めることとなっています。

コロンビア - ポパヤンSUP


ティピカ種:
アラビカ種のひとつで、コーヒーの歴史上で最も古くから栽培されてきた品種の原点といわれる品種がティピカ種です。
滑らかな甘さと爽やかな酸味のあわさった繊細な風味が特徴です。
病害虫に弱く環境に敏感な性質のため安定した栽培と生産が難しく、現在では完全なティピカ種のコーヒーは希少になっていますが、品種改良などによってティピカ種から生まれた品種が広く流通しています。
ティピカ種から生まれた品種のひとつにジャマイカのブルーマウンテンがあり、コーヒーの王様と称されて世界最高のコーヒーの名を欲しいままにしています。
ティピカ種の突然変異で至高の香りと味わいを持ちながらも、もともと多くない生産量だけでなく、か弱い性質のため病気や害虫によって生産量が激減するなどの理由から希少価値も非常に高くなっています。
パプアニューギニアのコーヒー栽培は、ヨーロッパの宣教師が持ち込んだ、ジャマイカ産のブルーマウンテンの苗木から始まったとされています。
このハイランドスウィートの品種は、ティピカ、アルーシャ、わずかにブルボンが混ざっています。
アルーシャはタンザニアのアルーシャ州で、ブルボンはインド洋のレユニオン島で生まれた、どちらもティピカ種の変異種です。

パプアニューギニア - ハイランドスウィート


ブルボン種:
アラビカ種のひとつで、同じくアラビカ種の一種であるティピカ種から突然変異で生まれた品種です。
インド洋に浮かぶレユニオン島で生まれたとされ、レユニオン島の旧名ブルボン島が名前の由来とされています。
やや小粒で丸みのある形をしており、豊かな香り、まろやかなコク、上品な甘み、しっかりとした味わいで愛されている品種のひとつです。
繊細で病害虫に弱いティピカ種から生まれながら、ブルボン種は環境適応能力が高く病害虫にも強いため、風味の良さと生産性の高さを兼ね備えています。

ペルー - ノース・アンデス・ゴールド・ブルボン


ムンドノーボ、カトゥアイ、カトゥカイ:
ブラジルのサンパウロ州ムンドノーボ地区にてスマトラ種(ティピカ種)とブルボン種の自然交配で生まれ、環境への順応性・病害耐性・収穫量の多さ・風味の良さを兼ね備えた品種であり、期待を込めて同地区と同じムンドノーボ(新世界)と名付けられた品種です。
マイルドな酸味やナッツ・カカオの香ばしい風味が特徴で、現在でもブラジルで広く栽培されています。
ただ、ムンドノーボ種は樹高が高く育つために生産者にとって管理面で負担が大きいため、樹高が低くコンパクトに育つカトゥーラ(カツーラ)種と人工交配したカトゥアイ(カツアイ)種が生まれました。
カトゥアイ種は、ムンドノーボ種の強靭さや収穫量の多さとカトゥーラ種の矮小性を併せ持ち、中米諸国で広く栽培されています。
カトゥカイ(カツカイ)種は、カトゥアイ種とイカトゥ(イカツ)種の自然交配で発見された品種とされ、病気に強く収穫量も多い特徴があります。
イカトゥ種は、コニロン(カネフォラ・ロブスタ)・カトゥーラの交配種にムンドノーボとカトゥーラを戻して交配し生まれた、同じく病気に強い品種です。

ブラジル - ショコラ - サント・アントニオ